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Archive for 2015年3月

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ランカウイ島はマレーシアの高級リゾートだとママは言っていた。

ガイドブックを見れば、砂浜でトロピカルなイメージ写真が、見開き一杯に掲載されている。いくら蝶捕りと言っても、少しはのんびりできるだろう。

パラソルの下で海を見ながら本を読むのもいいな。品川駅の本屋で弟に薦められた文庫を一冊買った。なかなか読む機会がなかった小説だ。楽しみだな。天気がよければホテルのプールに入ろう。水着も持ってきてるし。

旅の浮かれ気分で空港に着くと、待ち合わせ場所に、密輸商人のような小沢征爾が座っていた。大きな旅行鞄を抱えた吉澤さんは、おれら三人を見つけると、ニヤリと立ち上がり、挨拶もそこそこ鞄を転がして、搭乗ゲートに向かった。

羽田から香港。乗り換えてクアラルンプールへ。ほぼ一日飛行機に乗っていた。

初めてのマレーシア。空港横のホテルに着いたのは9時過ぎで、あたりは夜の風景だ。暗くなってから異国の地を踏むのは、不思議な幻惑感がある。

部屋に着いて、ベッドに身を投げて背中を伸ばしていたら、吉澤さんがドアをノックしてきた。

「疲れたでしょ。これ食べます?」

東京で見馴れたカップヌードルしょうゆ味。息子くんが飛び起きた。

「明日は、朝一の飛行機でランカウイに行きます。空港からそのまま虫捕りに行きますので、行ける格好で来てください」

吉澤さんは、おれの父親と同い年と言っていた。信じられないタフさだ。まさに蝶の世界の魔王だな。息子くんと道具の確認をしてから、おやすみと吉澤さんは部屋に戻った。

ママが洗面用具を出そうと、鞄を開けながらつぶやいた。

「ああー、着いたねー。遠ーかったねー」

息子くんは渡されたレジ袋を覗き込みながら、おれに言う。

「パパ。お湯沸かして。おれハラヘッタ。カップヌードル食いたい」

沸騰式のポットを見つけて、洗面台から水を注ぐ。沸かすから大丈夫だよな。

ついでに顔を洗っていたら、鏡に小さなヤモリが張り付いていた。捕まえて息子くんに見せる。窓の隙間からなまの生き物が部屋に忍び込んでくる。マレーシアはそんなとこみたいだ。

ヤモリくん、こんばんは。これから一週間よろしく。

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