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Archive for 2013年3月

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その日の夜には、まつくんからデータが送られてきた。早い。

録音した素材をバランスを取って並べ、軽くマスタリングした音源だ。

ひとつひとつの音をこまかく聞くと、リズムがずれてもたっていたり、余分な音を出していたり、音がずれていたりと、赤面したくなるところもあるが、全体のノリは悪くない。勢いもある。雑ではあるけど、ゴールに向かって押し上げて行くような感じもでている。

何度か聴き込み、修正点を洗い出す。ベーシックなトラックとしては完成だ。土台はできた。あとは何を載せていくか。

二番から入るオルガンのフレーズを作る。慣れない譜面を書く。息子くん用に買ったオモチャのキーボードが思いのほか役に立った。

三番のブレーク(音が止むところ)を考える。ここは緊迫感を出したかった。曲の進行に合わせて微妙にアレンジを変えてみる。実際のサッカーの試合と同じように、後半の盛り上がりに繋げるためだ。

まつくんから提案があった。

「二番の…“はじまりの笛がぴーと鳴って”のところで、実際のホイッスル鳴らしません?」
「いいねー!雰囲気出るね。でも音ネタあんの?」
「フットサルのときのホイッスルありますから、それ録っちゃいますよ」

こうして音を重ねながら、完成に一歩一歩近づけて行く。

いよいよ一番大事なパートの録音だ。この曲の肝である掛け合いのコーラス&声援だ。本物の試合で響くチャントのようになるか。この出来不出来で、曲が死ぬか、生きるか、が決まる。

決戦は土曜日の午前10時。2回目にして最後の録音が待っている。

スタジオに電話して、3時間の予約を取った。

○ ○ ○

開いたばかりのスタジオは閑散としていた。音楽関係の人々は夜型が多いので、こんな時間はガラガラだ。客のいないスタジオに、3人の小学生、9人の保護者が集まった。

歓声を録るにはいろんな質の声があった方がいい。小学生高学年の男子女子、低学年の男子、高いけど落ち着いたママの女声、太いパパ声、しゃがれた声、英語訛りの声、怒鳴り声。12人の個性はぴったりの人選だ。

コーラスは声質ごとに分け、マイクをパラで立てる。録音も可能な限りパラで録り、あとでバランスをいじれるようにしておく。このあたりの判断はまつくんにお任せだ。

今回レコーディングを始めて、彼のセンスと才能、進行能力に驚かされっぱなしだ。ほとんど打ち合わせもせず、踊り場のデモと数時間のおしゃべりで、おれとほぼ同じ曲のイメージを共有してくれた。お互い無理な完成度を求めないeasyなスタイルが噛み合ったんだと思う。長年のフットサル仲間の一人だが、こんな付き合いになるとは思いもしなかった。ふしぎなものだ。

まつくんが機材の準備をしている間に、ロビーでリハーサルをする。歌詞カードを配り、実際に歌ってみる。

おれはもうこの曲を一年以上、頭のなかで流し続けてるけど、今日スタジオに集まってくれた人は、初めて聞くような人ばかりだ。短い時間でポイントを伝える。理屈でなく感覚的なものなんで、上手く伝わるだろうか?

指で机を叩きリズムを出す。せーので歌ってみた。

はじめはバラバラでどうなるかと思ったが、歌詞の意味がわかりはじめると、瞬く間に音楽的になっていった。とくに子供達の適応力には驚いた。

すごい。すごい!
ちょっと興奮する。
音楽を作る楽しみは、まさにこれだ!

「ブラボー!素晴らしい!」

子供たちも顔を紅潮させて楽しそうだ。

「行ける行ける!このまま行こう!音の切り方に注意すれば、あとは完璧」
「切り方?」

2年生の男の子が質問してきた。

「音をスパッと切る、だからこう…どう説明するかな…」

小さい彼でもわかるクイックなイメージ。そうだ!

「おまえ、エラシコ知ってる?」

小さな頭が頷く。

「あれ、急にやると相手びっくりするだろ。あれを音でやるの。こんな風に」

強調して歌ってみた。

「聞き手が思いつかない、予想外なことをすると音楽になるんだよ」
「よそうがい?そうか、サッカーと同じだ!」

こんなところでも、おれたちの共通言語はサッカーだ。大人から子供までみんなサッカーだ。

○ ○ ○

いい雰囲気になったところでスタジオに入る。

はじめて体験するレコーディングに、参加者はドキドキだ。ヘッドホンをかぶりマイクの前に立つのも緊張気味だ。

はじめに子供たちを録る。声の大きさが合わず何度かやり直しをしたが、やる度に上手くなり、テイク4でいい音が録れた。

次は大人。こちらは子供たちの様子を見ていたので飲み込みはさらに早い。テイク3でほぼOKだ。

プレイバックを聞いてみる。素晴らしい!グランドの雰囲気が出ている。ベストテイクを録ることができた!まつくんもOKとのこと。

やった!峠を越えました!みなさん、よく頑張ってくれました。

音楽を作るのって、チームでゲームを作るのと似ている。一人一人が持っている特徴や個性を、いかに上手く組み合わせて、音の塊を作るか。

大事なのは、音を出す喜び、人の音を聴きながら自分の音を重ねる楽しさ、聞き手の予想を裏切ること、聞き手を驚かすこと。

正直、下手でもいいの。

楽しくやれば、それは音に表れるし、何を伝えたいかを忘れなければ、レベルなりにおもしろいものは作れる。

○ ○ ○

録音を堪能したゲストは、みんな早々と帰った。

まつくんとスタジオの後片付けをする。

ケーブルを巻きながら、まつくんとミックスダウンのプランを意見交換する。

録音は音を足して行く作業だが、ここからは音を間引いて行く作業となる。一所懸命がんばった音をあえて削り、本当に大事なところだけ残して磨いていく。

あとはまつくんに任せた。

きっと明日の朝には、素敵な音源が届いてるに違いない。

この曲が、味の素アミノバイタルフィールドに流れたとき、子供たちの心にどんな変化が起こるのだろうか?そしてどんなプレイをするのだろうか?

おれが伝えたいことは、変わらない。
いつもひとつだ。

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時間はない。
できることは限られている。

今ある素材と演奏技術で録音するしかない。頑張らないとできないことは、あえて追いかけない。利き足インサイドだけでゲームを作るようなものか。

表現したいのは、グランドの広さ、ボールの疾走感、子供達の躍動感、コーチや応援する保護者の高揚感、トレーロスとしての結束感だ。

新しい仲間、まつくんがアドバイスしてくれた。

「時間がないので…使える週末は2回しかないので、ミニマムで行きましょう。構成はデモのままで行けるのではないかっ、と。まずはリズムを固めましょう」

まつくんは、本職はドラマーだ。普段はフリーランスでプログラマのような仕事をして、週末音楽をする。仕事を終えてから、おれの歌い散らかしたデモを聞き取り、リズムトラックを作ってくれた。

いよいよスタジオ入りだ。

○ ○ ○

1週目はベーシックトラックの録音だ。楽器は基本3ピース。ドラム、シンセベース、アコースティックギター。この楽器構成で背骨を作る。

まつくんはリズムパターンをいくつか準備してくれた。跳ねてるのとか、四つ打ちで踊れるやつとか。さんざん試して、ドリブルの疾走感が出るからと、シンプルな8ビートを選んだ。

録音がはじまる。

ノイズを避けるために蛍光灯を消す。薄暗い部屋のなかで、まつくんの顔が、Macの液晶にぼんやり照らされる。床には手術室のようにコードが這い回る。

おれはギターを抱えてヘッドホンをかぶる。洞窟のなかに一人で入ったみたいだ。

ギターを録音するのはじめてだった。コードを取る程度でしか弾けないのに、まともに録れるのだろうか?

暗闇のなかから、コツコツと八つカウントが聞こえた。ビートが始まると、おれは必死にギターを掻き鳴らした。テンポをキープするのに精一杯だ。短い曲はすぐに終わった。

「どう?」
「もう少しリラックスしたほうがいいかも」
「おれギター下手だな」
「練習ですね」

スタジオを使える時間は3時間だ。ギターに使えるのはあと2〜3テイク。

「アップストロークを強調したら、裏打ち感がでてのりがよくなるかもです」
「こんな感じ?」

ピックを硬いのに変えて、弾き方を変えてみる。

「いい感じ。そのノリ忘れないで。じゃ、テイク2行ってみますか?」

何度か試行錯誤しながら、なんとか伴奏に使えそうな音が録れた。

「じゃあ、次は歌入れちゃいますか?」

おれはギターを脱ぎ捨てた。楽器というのは本当に不自由だ。思ってる音と、でてくる音がこんなに違うとは。プレイヤーの人はすごい。

できつつあるアンサンブルの上に、歌を重ねる。リズムがしっかりすると、歌のニュアンスが効果的になる。例えば語尾をすぱっと切ると、キビキビした感じになる。切り返しの効いたフェイントのようだ。エラシコだ。疾走してる雰囲気がでてきた。

歌はほぼ一発OK。

掛け合いのコーラスを声音を変えて一人でいれてみる。物足りないのでまつくんにも参加してもらう。声の混じり具合が気持ちいい。ここに子供達や大人の声がかぶさるところを想像する。

空いた時間でオルガンのフレーズを入れて、最初のレコーディングが終わった。

スタジオの近くの店で遅い昼食。

「お疲れ様です!」
「来週もよろしくお願いします」

駅で別れるとどっと疲れが出てきた。

家に帰ってソファに座ると、猛烈な眠気が襲ってきた。

録音て疲れるんだな。

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週末の午前。

階段の踊り場にギターとノートを持って一人籠もる。

お蔵入りさせておいたトレーロスの曲を、引っ張り出して弾いてみる。

ギターの弦が和音を響かせ、そのうねりの波にメロディを乗せてみる。歌詞の意味を考えながら歌ってみる。

緑のグランドを走る子供たち。真っ白なボール。青いジャージのコーチ。ピッチサイドの保護者や子供たちの歓声。劣勢の後の逆転。疾走感、緊迫感、解放感、一体感。

大丈夫まだ生きてる!力もある。感触はいい。なんとなくできそうな気もしてきた。

フットボールも、音楽も、人間の想像力の産物だ。

ラブソングを作る自信も、興味もまったくないけど、グランドの風景や選手やサポーターの心象風景、試合の高揚感や失望感を表現することは好きだし、楽しい。

「おまえ、やりきる自信あんの?」

歌に聞いてみる。
生簀から出てきたばかりの魚のようにピクピク元気だ。

おれは覚悟を決めた。

音源制作ができそうな友人に声をかけた。何年か前にトライアルをお願いして断られた彼だ。

デモ音源を送り、聞いてもらった。

おれの事情を察知してくれたのか、彼のサッカー好きが幸いしたのか、興味を示し快諾してくれた。

仲間が増えた。
ドラクエなら、ここでファンファーレがなるところだ。

無事スタートは切れそうだ。

さっそく簡単なアレンジ案を送る。

音楽もサッカーと一緒で、大事なのは仲間だ。一人でできることなんて、たかがしれてる。

やり切るには、ゴールを共有する仲間が必要だ。

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「この曲コパで使うんで、もう少しいい音でもらえませんか?」

飲んでいたグラスを落としそうになった。ビールがあわてて白い泡を吹いた。目の前でクラブの代表コーチが、にっこりと笑っていた。トレーロスの新体制発表会、キックオフパーティーの打ち合わせの最中の出来事だ。

はじめはこの人何言ってるんだろうと、聞こえないふりをしてそっぽを向いていたら、たたみかけてきた。

「デモテープがだめなら、ギター持って歌ってくれませんか?」
「いやー、無理っしょ。だってコパって平日じゃないすか?おれ息子くんのU10だって見れないんすよ」
「困りましたね」

ちょっと待ってくださいよ。困ってるのはおれのほうですよ。

すーっと酔いがさめた。

コーチの隣に座っていたS藤さんが無責任に煽る。

「いやー、光栄だな。この歌がコパのスタンドで流れるのか。すごいなー。大丈夫、この人は約束は守る人です。はい、決まり!」

ギャラリーはニヤニヤ。おれだけヒヤヒヤ。まだやるなんて一言も言ってないのを盾に、頭のなかで冷静に計算する。

あるのはギター一本で歌い散らかした音源のみ。ここからアレンジやって、レコーディングだと?残された時間は3週間。機材はどうすんだ?レコーディングはどこでどうやるんだ?

「いやー、冷静に考えて無理ですよ。時間もないし」
「いやいや、できるよ。無理なんてないない。あおだってこの前、学年上の試合で頑張ったんだから大丈夫!」

放火魔として名を馳せるK林さんが、理解不能な理由で押し付けてくる。

「じゃ、作るということで乾杯!」

おれ以外の全員が一致して、音源化が決まってしまった。数的不利は失点の最大要因だった。

さあ、困った。

何をどうすればいいのか?

会は終わり、みなさんほろよいかげんでの帰宅。

駅のホームで虚空を見つめる。なかまたちの楽しげなおしゃべりはもう聞こえない。

おれは頭100%フル稼働で、解決方法を模索する。

眠れないじゃないか。

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吐くほど聞いて寝かせる

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録音したデモを何度も何度も聞きこむ。ゲロが出るほど繰り返し聞く。そして口ずさむ。また聞く。聞いて聞いて、口ずさんで、聞きまくると修正点が見えてくる。それを直して、またデモを録る。

これ以上は無理かなっ、ていうとこまで行って、今度は人に聞いてもらう。

ヘッドホンで聞いてもらいながら、表情を観察する。どのフレーズにどう反応するか。直後の感想は詳しく聞くが、内容はあまり聞いてない。こだわるのは〈どこで〉表情が明るくなったかだ。

ここまで行ったら、歌詞カードを作り、クラウドにアップ。いつでも聞けるようにしておいて、寝かせておく。

普通はここで終わる。
おれの曲の場合。

しかし、今回はそういかなかった。

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うちのマンションの踊り場は、魔法のスペースだ。

三階低層マンションの非常階段は、梅雨時の子供達の遊び場になったり、デュエルマのバトルフィールドになったり、家を追い出されたパパたちの談笑室になったり、ローラー台を置けばロードバイクのトレーニングルームになる。この前は、けん玉の教室の練習場にだってなった。お隣のパパさんが公式の認定試験をやっていたのには驚いた。

○ ○ ○

この日は音楽スタジオだ。

日曜の午後、お隣さんが出かけてるのを見計らって、ギターをもって踊り場に行く。

三階吹き抜けの空間は、音がぐわんぐわん回るけど、イメージを広げやすく、アイディアを練るにはいい場所だ。

ここでトレーロスの歌を録音してみる。

スペイン語の歌詞を日本語に置き換えるだけで、曲の雰囲気はガラッと変わる。原曲のモチーフを活かしつつも、トレーロスのこどもたちの、生き生きとした世界観が表現できるように、何度も歌詞を確かめ、修正し、デモを録り直す。

創作中は自分に酔っているので、良し悪しの判断ができなくなる。山ほどデモを録り、翌日冷えた耳で聞き直す。

他人の演奏を聞いてるようだ。下手だなと何度も舌打ちする。

でも時々、偶然いいフレーズが出てくる。その時の気分は天文学者だ。新しい天体を発見した、研究者の気持ちだ。

そのフレーズにフォーカスをあて、何度も何度も聞き返し、なんでいいと思ったのか、要素を分析する。

毎回同じ演奏ができない下手プレイヤーだけの特権だ。

そんなことを繰り返し、少しずつメロディと歌詞を修正し、譜割りを固めて行く。地道地道。道路の舗装作業のような丹念な作業だ。

○ ○ ○

気づけば踊り場の窓の向こうは夕焼けになっていた。

石神井公園から帰ってきたお隣さんのこどもたちが、ギターの音を聞きつけて襲来してくる。何かおもしろいことはないかと、うろつきまわる飢えたグレムリンたち。咆哮をあげながら階段をドタドタ上ってくる。

「あおいくんのパパ、何やってるのーーー?」

踊り場にでかい笑い声と足音の残響が響く。

おれは襲われる前に、録音ボタンを止めて、ギターを抱えて、安全な部屋に避難する。

曲はこうしてできあがる。

こういう作り方って、ひょっとしておれだけなのだろうか?

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鳥頭くん、登場!

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僕らのチーム鳥頭のU10も残すところあとわずか。明日のトレーニングをもってKGMコーチを卒業します。

今年もいろいろあったけど、新しい仲間も増え、U11でもまた切磋琢磨しながら、フットボールを探求して欲しいものです。

記念に新キャラクター「鳥頭くん」を作ってみました。

来年はパパたちに鳥頭なんて言わさないような、賢いプレイを見せてください。

西原理恵子さんに敬意を表しつつ。

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