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Archive for 2012年8月

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森林限界を超えて、木々の背が低くなり、視野が広がると、乗鞍は天空の世界になる。

舗装された滑らかな道は、僕の足下から滑走路のように上昇し、斜面を蛇行しながら、遙か向こうの巨大な岩肌へと登っていく。

心拍計、175。
酸素、薄い。

視線をハンドルから、遠くの大雪渓へとうつす。遠近感が軽く麻痺する。

スケールが大きすぎるのだ。

視野を遮るものがないので、大きさの比較ができないのだ。

遠くを見上げる。

岩肌を斜めに切り上げた線がある。
これから登る道だ。

後ろを振り返る。

眼下に見えるのは、森林をのたうち回る蛇のような線。いま登ってきた道だ。

どちらの道にも、眩しい色鮮やかな点がつらなる。砂粒のような、そのひとつひとつがヒルクライマーたちだ。

頂上をめざす巡礼者だ。

なんのために?

完走すればわかる。

完走した人にはわかる。

ああ、奥さんと息子くんに見せてやりたい。

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この日、西が丘サッカー場から遠く離れた乗鞍の宿で、僕はiPhoneを見ていた。

LineやTwitterにつぎつぎと書き込まれる歓喜と落胆を、身悶えしながら見守っていた。

先制し試合終了間際ぎりぎりで追いつかれ、延長戦ではまた勝ち越し勝利を掴みそうになるとロスタイムで追いつかれた。

PK戦までもつれ、4人目まで競り合い、23の5人目がはずしたところで終わり。

天皇杯出場の夢はもちこしとなった。

でもさ。

23らしいじゃん。

関東リーグ行くのも何度も失敗したし。

負けるたびにもっと強くなろう。

はじめて東京23を見に来てくれたFCTU11千葉さんが写真を撮ってくれた。あまりにいいのでスライドショーにしてみました。

さあ、行こう!23
勝利をめざし
どんなときでもずっと
ついていくぜ!

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晩ご飯が終わり、なんとなく寝る準備がはじまる。息子くんは雰囲気を察知して、録画したアニメを見はじめる。

「抵抗するなー。あおい、早く寝れ。明日起きれんぞー」

ママがテーブルでパソコンを開く。仕事ではなく、明日の準備をぎりぎりまで確認するのだ。

せっかく見はじめたビデオの電源を消す。その間にも携帯の着信音が鳴り、トレママからの電話がかかってくる。

「ええー?大丈夫じゃない。うちはジャージー、念のため入れたけど。今週はドイツ暑いらしいよ。現地情報だから間違いないよ」

息子くんは、歯を磨きながら、おれに目配せをした。

「パパ、寝よ」
「いいよ」

いつもと同じように、いつもの遠征や合宿の前の日のように、息子くんは寝床についた。

○ ○ ○

翌朝、おれはいつもと同じように早起きだ。

寝ぼすけのママも今日は早起きだ。

「あいつ、寝れたかな?」
「寝てるね。結構図太いのかも」

食器を洗っていたら、息子くんも起きてきた。いつもより相当早い。

「おは!」
「おは…」

ぼさぼさの髪の毛が、寝起きのかっちんみたいにぴょんと立っていて、目はまだ虚ろだ。

それでもスーツケースを開けて、体温計を取り出し熱を計っている。遠征中は毎日熱を計り、ノートに記録するのがチームの約束ごと。

ああ見えて几帳面な性格なんだ、息子くんは。あいつのなかでは、もうドイツ遠征は始まってるんだ。

○ ○ ○

上石神井の駅でチームメートと待ち合わせ。いつもなら大はしゃぎなのに、今朝は神妙な顔をしている。大人になったからか、緊張しているのか。

はじめての海外遠征。それもドイツの強豪クラブとの対戦。

杉並の一街クラブが、何の幸運か、ブンデスリーガのジュニアチームが出場するカップ戦に出場できることになったのだ。クラブも驚いたろうが、保護者も驚いた。都大会へも行けない彼らが、いきなりドイツ遠征だ。

しかし、ヨーロッパ遠征。お金も時間もかかる。兄弟のいる家庭は家族会議だ。

人数が揃わなければ、クラブも出場を辞退すると言っていたが、チーム鳥頭の保護者たちは、あっという間に最低参加人数をクリアしてしまった。

ほんと、いかれてるよ。みんな。行くのこどもたちだぜ。

○ ○ ○

旅の準備はママの入念なチェックのもとに進められた。クラブによるオリエンテーションから始まり、パスポートの取得、持ち物リスト、衣類の選択、シューズ&スパイク、ユニやジャージー、筆記用具に薬、ありとあらゆる可能性を考慮して準備され、何度か仮パッキッングされては、スーツケースの容量が確かめられた。

パパであるおれの出番は、まったくなかった。

息子くんとママの話し合いで物事が進められ、スムーズに問題は解決されていった。

可能な限り息子くんが主体的に仕事を行った。パスポートの書類書きや申請なども、自ら池袋のパスポートセンターに行き、円からユーロへの両替も体験した。

嫌がりもせず、自ら積極的に準備をした。小学校4年生にしては、ずいぶんとがんばっているように見えた。

面倒くさがりもせず、不安な表情もせず、臆病とは真逆の、勇気ある息子くんに、正直不安を感じたのだ。

「おまえ、外国行くの、怖くないの?」
「別に…。だってコーチも、友達も行くし、合宿みたいなもんでしょ」
「まあ、そうだけど…」

おれは仕事ではじめて海外に行ったとき、正直憂鬱になったのになあ。言葉もまともに通じない未知の国。

「すごいね。度胸あるね。パパびっくりだよ」
「そ、か、ね?」

上石神井に急行が着いた。

まだ学生は夏休みだったが、それなりに混んでいて、スーツケースを積み込むのも大変だった。

○ ○ ○

今年のプレミアの話題は、香川のマンチェスターユナイテッド入りだ。日本人が世界のトップレベルのクラブに移籍するのもはじめてだし、開幕戦でスタメン出場するのもはじめてだ。

その記念すべき日に、息子くんはドイツ遠征に旅立つ。

ケルンで開催されるGeissbockCup。

ケルン、ヘルタベルリン、レバークーゼン、シャルケ、ボルシアドルトムントなど、ブンデスリーガのジュニアチームが出場する名門の大会に、杉並の街クラブが参加するのだ。

○ ○ ○

日暮里駅で乗り換えだ。

ここからは特急スカイライナーで成田空港へ行く。おれが付き添うのはここまで。

あとはママと成田まで行き、引率コーチに引き渡したらお別れだ。

息子くんは友達とふざけもせず待っている。

ママたちはスカイライナーの切符を買いに、窓口に並んでいる。

おれはほとんど、なんの実務的な貢献をしなかった。その罪滅ぼしに日暮里まで付き合うつもりだった。

改札前にぽつんと立っていると、息子くんがスーツケースを転がしながら、おれのところにきた。

そして、スーツケース越しに、うつむいたままおれの腹筋におでこをぶつけてきた。

3回、とんとんとんと。

これどこかであったな?

そうだ!

2年生のコパトレーロスで負けたときと、4年生のハトマークで予選敗退したとき。

あいつは悲しいとき、どうしようもないときに、おれの腹に頭をぶつける。

そうだよな。

まだ10歳になってないもんな。
ほんとは不安なんだよな。親を離れて海外に行くなんて。

いくらがっしりしてきたとはいえ、まだまだ小さな肩幅だ。おれの腹に頭をぶつけても、うつむいているので表情は見えない。

泣いているのか?

○ ○ ○

ママが来た。

「あおい、切符これね。スカイライナー乗るよ」

さあ、出発だ。

何事もなかったように、息子くんはスーツケースを掴んで、改札を通り過ぎていった。

もうおれの顔は見なかった。

パパにバイバイしたらと、ママが遠くから促したが、息子くんはもうホームへ消えてしまった。

ようへいとしょーはおれに手を振ってくれた。

いいのいいの。
わかってるって。

あの、おでこの、とんとんとんが、行ってきますだったんだよな。

負けず嫌いの、強がりの、でもやさしいあいつらしい、別れの挨拶だったんだよな。

一週間、がんばってこいよ。
いろんなものを見て来いよ!

がんばれ、息子くん。

Photo by Ogino

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素晴らしい体験は、いくつもの偶然が重なりあって、はじめて起こる。

それを実感した夜だった。

三日間の帰郷の最終日に、たまたま天気が回復したこと。

その日キャンプをしようと思ったこと。

実家の裏山の山頂にある静かな池に行ったこと。

そのキャンプサイトにたまたま去年から管理人が常駐したこと。

管理人が地元のいいおじさんであったこと。

貴重な動植物、昆虫が生息する池で、息子くんがアカハライモリに再会できたこと。

おじさんから、今夜は韮崎の花火大会で、夜山頂に行けば花火を眼下に見えると誘われたこと。

眠い目をこすり、真っ暗な山道を、車を走らせると、甲府の夜景が絶景だったこと。

山頂にたどり着くと、雲ひとつない夜空に満天の星空、降り注ぐような天の川に息を呑んだこと。

星って、こんなにあったんだ…

韮崎を見下ろす展望台で待っていると、遙か足下の河川敷で花火大会がはじまったこと。

ミニチュアのような花火の炸裂を、神様が地上に咲く花を愛でるように見られたこと。

火薬の微細な粒子が、放射状の精緻な形を描き、彩り豊かにはかなく消える。

1700mの山頂から、上空300mへ打ち上げられた花火をさらに上空から見下ろすありえなさ、贅沢さ。

ふと星空を見上げたら、天頂にガラスを釘で引っかいたような閃光。一瞬の鋭利な明滅。

ペルセウス流星群を観測できる今年最後の夜だったこと。

さすがに流星雨といえるほど、連続しては見えなかったが、記憶に深く残る軌跡。

しかし、まったく、ありえないシチュエーションだ。

一夜にして、どれだけ非日常的な、奇跡的な経験ができるとは。

でも。

偶然に見えるけど、実は違う。

たまたま出会った人から幸運のおすそ分けをいただいただけだ。

だから出会いは大事。

それこそすべて。

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東京23の関東リーグ後半戦は、この夏の連戦で決まる。相手も強豪ぞろい。

というわけで、おれら杉並トレーロスパパスも選手のためにがんばって応援することにした。

何をがんばるかというと、杉並からグランドまで自転車で行こうというものだ。

23応援ライド~荒川サイクリングロード!

このバカ暑い日中の荒川沿いを、自転車で指扇(大宮)まで走るのだ。約30キロ。自走でグランドまで駆けつけて旗を振り、コールする。

別にこんな愚行が選手の後押しになるとは思わないけど、サポータってそんなもんです。

ということでお声掛けしましたら、さっそく「OK!OK!やっちゃいましょうか?」のOKさんが乗ってきた。本人は試合前日には柔道の合宿で静岡にいますが、わざわざ帰ってくるとのこと。

そして2号はそねPさん。笑顔の向こう側に「こんな迷惑な企画を立てやがって…」との本音が見えつつも、他人の意見はスルーB型のおれは、彼の建前の笑顔をOKのサインとして理解しました。

まあ、行きはよかった。

OKさんはじめてのサイクリングロード。その解放感を楽しんでるうちにグランドへ到着。

23は先制され、追いつき逆転、後半追いつかれドロー。リーグ首位は堅守したので、目標は達成。気持ちは天皇杯へと。

さて、帰路。

グランドを出発したのは1時半。一番暑い時間だ。自転車乗りの朝はふつう早い。夏は涼しいうちに走り、車の増える前に帰るというのが基本。正午過ぎに乗るのは自殺行為だ。

その自殺行為にチャレンジしてしまった3人のパパス。

フライパンの上で炒られる豆のように、アスファルトの上をじりじりと走る。気温は35度を超えている。

喉がすぐ渇く。コースをはずれて自販機で冷たいドリンクを仕入れるが、すぐぬるま湯に。

向かい風も心を折る。腕を撫でる風は熱風だ。

責任感の強いおれは、二人の先頭を引き、彼らの負担を軽くしようとするが、二人とも無言で、機嫌が悪く、どちらかというと怒っている風に見える。先頭なので表情がよくわからない。

大声で後ろの二人に怒鳴る。

「上石神井に着いたら<かみしゃく村>に行こう!冷たいコールドビールを飲もう。グラスが真っ白に凍っていて、きんきんに冷えた黄金のビール。底から泡がわき出て、雪の帽子のような泡がのっかってるやつ」

後ろ二人のピッチがあがる。OKさんのマウンテンのタイヤが急にごーっと音を立て始める。

朝霞市内を走り、大泉学園を通過すると、おれら3人の頭の中にはビールしかなかった。

ペダリングのペースは、「ビール!ビール!冷たいビール!」の繰り返し。

上石神井の踏切を過ぎ、STさんの電話を無視して、とにかく一歩でも早く店に入り、ビールを注文しようと全員スプリント勝負となった。

一圓ストリートでは、アシストのおれを二人が置き去りにした。先頭はOKさん、二番手がそねP。

店の前にはメニューの華やかな看板が立っていた。まるでツールのゴールのようだ。大きな看板の前を一番でゴールしたOKさんが、悲鳴をあげた。

「あ、あおパパさーん。お店しまってますうー」

ああ、なんということだ。もう今日のおれたちを救ってくれるものはない。

うなだれたおれたちは、近くの酒屋に行って冷蔵庫で冷えたビールを買い、セブンイレブンの駐車場で乾杯。

旨いんだか、苦いんだか。

全員無言で、善福寺にこどもたちを迎えに行くことにした。

お疲れさまでした。はあ。

表題と集合写真:STパパ

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リーグ戦の昇格や降格は、サッカー観戦の最大の楽しみだ。

でもそれは自分が当事者でないことが条件だ。いざ自分の応援しているクラブがその立場になれば、心おだやかではいられない。僕の場合、2000年11月19日、J2最終節の第44節、浦和vs鳥栖が、一生忘れることのできない試合となった。降格した浦和がはじめてのJ2を戦い、昇格の最後の1枠を大分と争った伝説の試合だ。

それにしても、ひどいシーズンだった。

まともな準備を何もせず、下部リーグをなめたままシーズンに臨んだ浦和は、一巡目こそ好成績で勝ち点を積み上げたが、二巡目からは本当に勝てなくなった。

挙げ句の果てに、アウェイでの惨敗にサポータが選手バスを襲撃したり、監督が更迭されたのに新監督がいなくて、GMが代行するものの、資格がないので元監督をベンチに座らせるなど、信じられないことが起こった。

浦和は羽根がぼろぼろに破れた蝶のようだった。何とか風をつかんで、安全なところ、昇格圏にたどり着けばいい。後のことはそのとき考える。希望とか未来なんてのはここにはなかった。

最終節は勝てばいい。勝てさえすれば大分に席を捕られないで済む。

選手もサポータも不安を抱えたままのキックオフとなった。

試合は先制するものの、喜びは長続きせず、ディフェンダーとキーパーの交錯という最悪のミスで同点に追いつかれた。

そのとき、駒場スタジアムのオーロラビジョンに他球場の結果が映った。

大分 1-0 大宮

なんと、大分が先制。
絶対絶命だ。

もう、引き分けとか逃げる場所はない。

浦和ホラー劇場はまだ続く。

最悪をさらに上回る極悪のミスで、今度は相手にファウル、レッドカード=PKを与える。駒場に集まった2万人のサポータは、心臓にナイフを突き立てられた。

2万人が息をのむ。

相手のシュートはゴールポストに当たった。カーンという金属を叩く音。一瞬の安堵。ボールはまたキッカーの足下に。

もうだめだ…

しかし、リバウンドのシュートも相手が枠をはずす。

奇跡が続く。

大分 1-0 大宮

呪いのような文字がオーロラビジョンに映ったまま、試合は前後半を終え、延長Vゴールへ。

大分 1-0 大宮(試合終了)

大分の勝利は確定した。
この時点で大分の勝ち点は浦和を上回った。

浦和は、わずかな延長時間のなかで、ゴールを決めない限り、来年もJ2であることは確定だ。

勝つしかない。勝つしかない。

猛烈なプレッシャーに押しつぶされるように、駒場のスタンドは押し黙ったままだ。

しかし、そのとき。

岡野がバックスタンドへ全力疾走でやってきた。ハーフウェイラインに沿って、まっすぐピッチを横切って。そのままバックスタンドに向かって仁王立ちし、右手を高く掲げた。

一瞬にして雰囲気が変わった。
駒場の心臓がまた動き始めた。
こんなところで負けてたまるか!

昇格を決めた延長Vゴールは、土橋正樹の長い弾道のミドルシュートだった。

駒場大爆発。

○ ○ ○

ふと、この試合を思い出し、Youtubeで動画を探した。

驚いた。

動画のこの場面を見てほしい。

動画 05:24
動画 09:13

当時、熱心な浦和サポだった僕を、絶望の一歩手前まで追いつめた男、悪魔のような大分の28番は誰だ?

加賀見健介選手だ。

ヘディングを決めて浦和を地獄に落とそうとした、闘志あふれるその男は、今息子くんにサッカーを指導してくれるあの加賀見コーチだ。

駒場のオーロラビジョンに、呪いの“1-0”を刻んだ男。

サッカーの不思議なつながりを実感した夏。

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きみの小さな丸い肩が、ゴール前で左右に揺れている。視線の先には白いユニの仲間たちが、エンジ色のライバルたちと中盤を争っている。

ボールの位置を確かめながらきみは、ペナルティエリアのなかを左右に動く。檻の中をうろつく獣のようだ。

戦況を見ながら右手をあげ、仲間たちに声をかける。

「あお!24マーク!」
「よーへー、裏とられるな!」
「かっちん、おまえから行け!」
「さと、フリー!」

チームで一番おだやかでやさしいきみが、キーパーグローブをはめると別人になる。王様のように命令し、チームを最後尾から動かす。

さとがドリブルで相手陣地、深く押し込んでいく。白い選手たちが相手のハーフコートに押し上げる。

きみは用心深くペナルティの檻を抜けだし、センターサークルまで進んでいく。仲間たちが旅に出ている間、大事な自陣をひとりでカバーする。大海原を一隻で守るイージス鑑のようだ。

仲間がボールを奪われ、反撃の危機を察知すると、すぐさまゴールへと帰る。

怒濤の反撃を予感すると、大声で仲間を呼び、相手の攻撃を少しでも遅らせ、威力を弱めようとする。

それでも仲間たちの守備陣をかいくぐって侵入してくる敵に対しては、覚悟を決めたライオンのように、身体ごと相手のボールを押さえに行く。

その勇気に、おれは打たれる。

身を挺して、ゴールを守ろうとするきみの決断は、大津波の襲来を前にした守護神だ。

○ ○ ○

わずか半年前、きみがU10の正ゴールキーパーに指名されたとき、カチンとスイッチの入る音を聞いた。

6年生を対象にしたワタコーチのキーパーレッスンに、電話で直訴して、4年生で参加したのはきみだけだ。

きみの努力は、いつか必ず大きな花を咲かせる。

サポータはいつだって、努力を続ける勇気あるゴールキーパーが大好きだ。

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