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Archive for 2012年2月

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雪の日の朝
お餅を食べた。
今日から学校がはじまる。

お皿にしょうゆをたらしたら
男の子がでてきた。

いたらずそうな男の子。

ママが言った。

『早くご飯食べなさい』

お餅を食べながら男の子を見ていたら、話しかけてきた。

「おまえ、なまえなんていうの?」
「こうただよ、きみは?」
「ゆー」

ママが台所から言った。

『まだ食べてるの?早くしないと学校遅れるわよ』

ゆーが聞いた。

「学校行ってなにするの?」
「勉強だよ」
「勉強って?」
「ひらがなとか、足し算とか」
「楽しい?」
「楽しくない」
「ふーん、なんで行くの?」
「こどもはみんな行くって決まってるの」
「決まりって?」
「やらないとおこられること」
「ふーん」

ママが洗濯機の前で言った。

『まだ食べてるの?時間割はそろえた?』

男の子に聞いてみた。

「ゆーくんは学校行かないの?」
「おれは皿から出られないしなー。おまえはいいなー。好きなところ行けて」
「好きなところなんて行けないよ」
「なんで?」
「時間がないもん。学校から帰ってきたら、手をあらって、うがいして。おやつ食べたら、すぐ宿題やって、チャレンジやって、そのあと習字行って、スイミング行って」

洗濯物を持ったママが言った。

『また雪が降ってきた。今日は外に干せないわ。傘持ったの?』

ぼくは窓の外を見ながら言った。

「ゆーはいいな。皿から出られなくって。時間がたくさんあって」
「時間があったらどーするの?」
「へへ。どーしようかなあ!えっとね、学校終わったら家に帰らないで図書館に行く。好きな本を好きなだけ読む。昆虫の図鑑とか、釣りの本もいいなあ。あきたら公園に行こっかな。友達見つけて、こおり鬼とかドッチやる。汗かいたら水道で水飲む。疲れたらブランコに座って、猫と遊ぶ」

ママはため息をつきながら言った。

『雪積もってきたから長靴履いてきなさい。どこにあるかわかる?早くしないと遅れるわよ』

ゆーは皿の中でにやにやした。

「おもしろそーだなあ」
「うん、遊んでるうちに猫が話しかけてくるんだ。おもしろいところがあるから行こうって」
「おもしろいとこ?」
「みんなで猫のあとをついていく。三宝寺池を通って、野鳥広場を抜けて、公園の用具置き場に着くの」
「用具置き場?」
「そう。猫が扉を開けてくれる。中は真っ暗なんだけど、古いいすがならんでるんだ」
「いす?」
「むかし、パパとかママがこどもだったころ、学校で座っていたいすなの。ほこりだらけだけど、まだすわれるんだ」
「へー」
「それでまたいですわってみる。するといすが馬みたいにいななくんだ。ぶるるーって」
「生きてるの?」
「そう。ぶるぶるふるえたりするの。みんなおもしろそうだからすわってみると、ぶひーとか、ひひーんとか鳴くんだ」
「おもしれー」
「おしりをたたいたら一匹が走りはじめて、みんなたたいたらみんな走りはじめて、倉庫のなかをぐるぐる回りはじめた。そしたら、猫が扉をぜんぶ開けたんだ」
「おおー」
「真っ暗な倉庫に光がまぶしくて。そしたらいすがみんなうかび上がって、ぼくたちを乗せたまま飛びはじめた」
「飛ぶのかー」
「はじめはバランスとるのむずかしかったけど、すぐ慣れた。みんなで列を作って、飛んでたら猫がさけんだ。行けーって」

ママがなんか言ってたけど、聞こえなかった。

「いすは僕らをのせてロケットみたいにとびあがった。息が止まるかと思うほど、すごいスピードだった。みんなで列を作ってまっすぐ空に向かって飛んでった」
「すげー」
「下を見下ろしたら石神井公園がぜんぶ見えた。ボート池も、グランドも、野球場も。地図みたい」
「それで?」
「そのまま、すごいスピードで空を飛び回った。遠くに行ったり、戻ってきたり。みんな飛ぶのがうまくなって、鳥みたいに自由に飛べるようになった」
「いいなー」
「だれかがいすの上に立って、おしっこをしたの。そしたらみんなまねして、みんなでおしっこをした。空からぼくたちのおしっこが雨みたいに降って、下を歩いている人が傘をさした。そのうちおしっこは、真っ白な雪になって学校の校庭に降りつもった」
「うけるー」
「学校の先生も校庭に出てきて、こどもたちと一緒に大騒ぎして雪投げをするの。ぼくらのおしっこなのに!」
「あははー」
「もっと遠くへ行こう。向こうに小さく東京タワーが見えるから、行ってみようかな?スカイツリーでもいいなあって、友達と相談する!」

ゆーのこえがきこえた。

「こうた、またね…」

こうたは鳥みたいに空をすべりおりた。住んでるマンションを見つけてベランダに着地した。部屋に入るとママが食器を片づけたところだった。

『さあ、ご飯おしまいよ。お友達がむかえに来てるわよ。学校行きなさい』

台所には洗ったばかりのお皿がぴかぴかに光って並んでいた。

こうたはランドセルをしょって学校へ行った。

(おわり)

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ミニ・コパトレーロス。

近隣の16チームが集まるワンデイカップ。

3月に行われるコパトレーロスの前哨戦として、味の素スタジアムのアミノバイタルフィールドで開かれた。

フルコートを四分割した、少し大きなフットサルコートの広さで6人制。フィールド5人+キーパー1人。

三脚を立ててビデオの準備をする。視点の高いスタンドからの撮影。緑の人工芝にこどもたちの赤いユニがはえる。

撮影アングル、交換バッテリーの確認をしていると、足下からコーチの声が聞こえてきた。カメラのすぐ下、スタンドの真下で試合前のミーティングが始まった。

こどもたちの顔はいつになく真剣だ。ジョーク好きなコーチの笑顔が不釣り合いなほど。

「きみたちに質問します。今日の試合、自分が出られなくなっても勝って優勝したいですか?それとも均等に出場して勝負にこだわらないですか?さあ、どちら?選んでください」

コーチの白い歯が見える。試すような笑い顔。目は笑っていない。

こどもたちが小声で何かを答えた。聞き耳を立てたが、スタンドのスピーカーからBGMが鳴り響き、返事は聞き取れなかった。でも表情を見ればわかった。彼らの目に決意があらわれていたからだ。

「よーし、行こう!」

コーチがこどもたちにアップをうながした。

● ● ●

どの試合も接戦となった。

骨組みとなる選手はスタメン組として固定され、ほとんどの試合、はじめからピッチに立った。スタメン組の疲れと戦況を見ながら、サブ組が交代出場した。慣れない6人制に戸惑う選手もいた。戦いきれない選手は交代され、ベンチに戻ると、コーチから呼ばれ入念な指導を受けた。

チームが勝つために自分がでられないかもしれない。それでも勝って優勝したい。自己犠牲とは違うな…なんていうのだろう、チームゲームの本質を体験した瞬間なのだろうか。

稲妻イレブン的な、まだこどもっぽい勝利へのあこがれ、希求心。たぶん慣用句として勝ちたいといっただけなのかもしれない。

しかし、実際にベンチに座って、仲間の戦う姿を見ながら、いつ来るかわからない出番を待ち続ける。ひょっとしたら出番はないかもしれない。はじめて体験するジレンマ。あせり。くやしさ。

観戦している保護者も試練だ。ベンチに座る我が子の小さな背中を見るのは本当にせつない。

しかし。
これがフットボールなんだろうな。

コーチの目は冷静で正確だ。出場できる選手には理由があるし、できない選手にも理由がある。選ばれるからこそ「選手」。切磋琢磨のはじまりだ。

実力という鏡の前で、はじめて自分の姿を見つめたこどもたち。はじめての試練が、彼らの闘争心に火をつけるのだろうか。

● ● ●

予想外の結果というか、チームは決勝まで勝ちあがり、優勝してしまった。

優勝が決まると、スタメン組もサブ組も肩を組んで飛び上がった。がっちりと握手し、ピッチをばたばた走りまわり、チームがひとつになった。昨年のインターナショナルカップ以来の優勝だ。

コーチはこどもたちの技術や試合内容に不満だったと聞いたが、今日だけは彼らの喜びを支持してあげたい。ピッチでもベンチでもよくがんばった。

そういえば。

切磋琢磨。
克己。

小学校の教室に貼ってあったなあ。

この年齢になるまで、本当の意味がわからなかったよ。
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Wiiのモンスターハンターにはまる小3の息子くん。パラメータの快楽とCGの刺激に溺れる毎日。ヴァーチャルリアリティの世界からなかなか帰ってこない。

そこでパパが反旗を翻した。

本当の物語の世界にひきづりこんでやろう。準備するのは一冊のファンタジーと暗い部屋、薄明かりの読書灯。

本を開く。
読みはじめる。
ゆっくりと落ち着いて。

行間や句読点ではしっかり時間を取る。こどもの心に沁みこんだのを見てから、次のページをめくる。

親子二人で、物語の暗い洞窟に入る。

視覚を奪われると、想像力は無限に拡大する。

読みすすめるにしたがって、場面が描かれ、世界がくっきりと見え、足の裏に地面を踏む感覚さえ感じられる。登場人物が生き生きと動きはじめる。彼らの体温や、息の匂いさえ感じられそうだ。

モモが動き回る。
このあとどうなるの?
これからどこに行くの?

いいところで一章が終わり。続きは明日。

映画でも、ゲームでも味わえない心の冒険に出発だ!

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